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崎山多美『月や、あらん』〈インパクト出版会〉
月や、あらん
水上揺籃
戦場の記憶を抱いて あとがきの代わりに
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沖縄で生活してきた者にとって、今を、未来を生きていくためにはどうしても振り返らなければならない出来事が、あの戦争だった。
「戦争」を素通りして書き手として存在することの困難が書き始めたものたちの心を縛っている。
戦争の影は、濃く、冷たく、残酷に、痛々しく、そして悲しく漂い続ける。
言葉を使う表現行為には、そのような呪縛がいつも張り付き、それから逃げることは難しい。
私も、そんな思いと葛藤しながら書き続けている小説家の一人である。
そのことをもっとも意識的に格闘した作品が、この「月や、あらん」であった。
「戦場の記憶を抱いて あとがきの代わりに」より
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発行:2020年8月1日
発行所:インパクト出版会
※2012年刊行「なんよう文庫」版に「戦場の記憶を抱いて あとがきの代わりに」を加筆。
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